ハンドボールの世界にも「名言」といわれているものがあります。
名将や世界的に有名なプレイヤーが発するような名言から、ちょっと面白い・変わった名言までさまざまです。
ここでは、そんなハンドボールの世界における名言についてご紹介していきます。
世界の名将の名言
ハンドボールの世界にも世界的に有名な監督、いわゆる「名将」と呼ばれている人がいます。そんな名将が残した言葉をご紹介します。
「今の日本の状況を変えたい」 ダグル・シグルドソン (日本代表監督)
世界一の指揮官と言われたダグル・シグルドソンが、日本代表の監督に就任する前の雑誌対談で話した言葉です。
彼のこれまでの功績は輝かしいものがあり、オーストリアなどでクラブチームの監督を務めたあと、ドイツで代表の監督に、2015年には国際ハンドボール連盟から世界最優秀監督に選出されました。
リオデジャネイロオリンピックでドイツ代表を銅メダルに押し上げた功績は、今でもたたえられています。
そんなダグル・シグルドソンが、日本の代表監督に就任する前「今の日本の状況を変えたい」「日本のハンドボール界の発展に貢献したい」と語った裏には、現在の日本代表のおかれている立場があります。
現在日本の男子ハンドボールは、1988年のオリンピック以来、オリンピックの代表権を獲得していません。
さらに、今年の世界選手権では出場国24か国中22位と下位に低迷しています。
2020年の東京オリンピックは、開催国枠での出場が決まっているものの、今の状況では厳しい戦いが予想されることを受けて、冒頭の発言につながったと思います。
世界最優秀監督を受賞したこともある名将が、どのように今の日本の状況を変えてくれるのか期待が高まります。
「残りの10分間 人生をかけて戦ってこい」 ヴェセリン・ヴィヨヴィッチ (スロベニア代表監督)
2017年のハンドボール世界選手権3位決定戦で、スロベニアとクロアチアが対決しました。
ゲームはクロアチア優位の状況で進み、残り10分、5点ビハインドの状況でスロベニア代表監督 ヴェセリン・ヴィヨヴィッチが言ったセリフが、タイトルの「残りの10分間 人生をかけて戦ってこい」です。
ハンドボールは1点ずつしか得点できないスポーツ、しかも点の取り合いになるので、残り10分からの5点差逆転というのは非常に厳しい条件でもあるのですが、スロベニアは、マンツーマンとプレスを多用したディフェンスから得点を奪っていき、流れをつかみました。
そして、逆転をしてメダルを獲得するという、文字通りの「大逆転劇」を、このあと演じることになります。
ポジションごとの名言
キーパーに向けて「動くな」 中学校顧問
ハンドボールのゴールキーパーは、近距離で強烈なシュートが飛んでくるので非常に怖いポジションです。
そんなキーパーを志す人は、サッカーでゴールキーパーを経験している人も多くいるのですが、動きでどうしても注意されるのが冒頭の「動くな」です。
サッカーのゴールキーパー経験者は、どうしてもボールに対して、選手に対して動く傾向があります。
これは、サッカーゴールという広い範囲を守るためには必要な動きですが、ハンドボールのようにゴールが狭いスポーツでは、むやみに動くよりもできるだけ身体を大きく使い、ボールをぎりぎりまで見極める必要があります。
そのため、「動くな」という指導がよく入ります。
「センターはエースではない」 ニコラ・カラベティック (フランス代表)
フランスの代表にも選出されたことがある、名プレイヤーの「ニコラ・カラベック」。
ポジションはセンターということもあり、チームの要でもあります。そんな選手が残した言葉が「センターはエースではない」という言葉です。
フランスのメディア向けの会見で話した言葉ですが、センターというポジションの重要性や役割を、とてもよく表している言葉になります。
彼のプレイスタイルは、得点を取るのも上手いですが、それよりも正確で速いパスです。
チームメイトの特性やゲーム展開を意識して、的確なパスが送られ、得点につながります。つまり、エースと呼ばれる人を活かすことが、とても上手なプレイヤーでもあります。
センタープレイヤーを目指すのであれば、彼の言葉を意識してプレイすることが大切です。
「キーパーは常に冷静であれ」 ニコライ・ラディン (デンマーク代表)
デンマークを代表するゴールキーパー・ニコライが、インタビューでよく話すセリフです。
ゴールキーパーというのは、攻撃時、守備時において唯一全体を見ることができるポジションです。相手の攻撃の方法、味方の状態などを把握しやすいのがゴールキーパーであります。
そこで、ゴールキーパーであるならば、常に冷静にゲームを見つめコントロールをしなさいというのが、彼の言い分になります。
たしかに、実際にゲーム中、ゴールキーパーは比較的、冷静沈着な人が多いというのが実際にプレイをしているときの印象です。
また、ゴールキーパーからのボールは攻撃の起点ともなります。キーパーが熱くなっていると、攻撃の始点となる部分から乱れてしまう可能性があります。
ゴールキーパーは、扇の要です。そのプレイヤーが冷静に状況を判断してゲームを進めることができれば、チームも落ち着いてゲームをしていくことができるでしょう。
ゴールキーパーとセンターへの名言 「双頭の龍」 大学指導者
大学で日本一を勝ち取ったことがある指導者の残した名言です。
普段の練習時に、ゴールキーパーとセンターの2人の選手に向けて「双頭の龍になれ」と言ったそうです。
最初は意味合いがよく分からなかった言葉ですが、よく話を聞いていると「キーパーとセンターが攻撃の始点」という意味になります。
ハンドボールをやっていると、センターが攻撃の始点になるのはよく分かります。
ただし、センターが起点になるのは主にセットプレイに関するときだけです。速攻など相手のディフェンスを素早く切り崩すときは、ゴールキーパーからのボールで切り崩すことが多いです。
そこで、タイトルにある双頭の龍の意味が分かります。この発言をした監督のチームでは、センターがボールを持ったときにはセットプレイ、ゴールキーパーがボールを持ったときには速攻とチームの戦術を決めていたそうです。
このように、一定のルールのもとで攻撃方法を決めたい場合には、便利なやり方です。
かっこいい名言
「点を取るのがエースじゃない 流れを作るのがエースだ」 高校指導者
ここぞという場面の、叱咤激励として使いたい言葉です。とある高校の指導者が話した言葉ですが、今という場面で使いたいです。
ハンドボールにおいてエースと呼ばれる選手は、基本的に点取り屋です。
相手チームは、その点取り屋を抑えるために厳しくディフェンスをしたり、マンツーマンでマークしたりと点を取らせないように工夫をしてきます。
こんなときエースというのは、どうしてもプライドとこれまでの自信から、無理やりにでも点を取りに行こうとしてしまいます。
結果的にシュートミスをしたり、ボールを相手にとられてしまったりして、チームがうまく乗れないことがあります。
そんなときに冒頭の言葉を話して、エースという意識を変えたいものです。エースに守りが集中しているということは、他の選手が空くということにもなるわけです。
また、冒頭のようなセリフはキャプテンでは言うことができません。キャプテンが言ったらチームとしての一体感を損ねてしまう恐れがあります。
指導者がしっかりと、チーム全員に伝えることによって、ゲーム中の意識改革ができる言葉です。
「スペインでプレイしたことで、ハンドボールへの考え方が変わりました」 宮崎大輔 (日本代表)
ハンドボールをやっている人であればよく知っている、日本代表の宮崎大輔さんがインタビューで残した言葉です。
かっこよい言葉であると同時に、今の日本のハンドボール界を如実に表している言葉でもあります。
まず、海外でプレイをすることで日本では得ることができない経験ができます。日本にもハンドボールのリーグはあるものの、まだまだメジャーではなく、収入の面でも設備目の面でも海外の進んだ状況とは大きく異なります。
スペインという強豪リーグのあるところで経験したことが、大きな影響を与えているのは間違いありません。
また、彼が同じインタビューの中で「練習では自分の能力を伸ばして、ライバルに勝たなければいけない」という発言をしています。
ハンドボールというスポーツはチームプレイが基本であるため、チームのために自分がどうあるべきなのかということを考えさせられます。
しかし、トップリーグでプレイをすることで、チームとしての力以上に個人の力が大切であるということを痛感したようです。
試合でも個人で局面を打開しなければいけないことは多く、より高いレベルを目指すのであれば、より高いレベルの環境で練習することが大切であると訴えているように聞こえます。
かわいい名言
「この仲間とハンドができてよかった」 高校生最後の大会後
この名言を残した人は、ハンドボールというスポーツを通してかけがえのないものを得ることができたのでしょう。
スポーツをする以上は、必ず勝ち負けが付きます。たとえ勝利という結果を得ることができなかったとしても、仲間という大切なものを得ることができたのではないでしょうか。
指導者としては、ぜひ、この言葉を教えた人たちからいわれるようなチーム作りをしていきたいものです。
「家族に感謝をしたい」 宮崎大輔 (日本代表)
前にも登場した、ハンドボール日本代表の宮崎選手の名言です。
レベルの高いリーグでのプレイを望んでいる彼は、日本ではなく、スペインなど海外を転々としながらハンドボールを行っています。
代表の試合も含めると、年間を通して半分以上、年によっては、ほとんど日本に帰ってくることがないというのが現状のようです。
そのため、自分を支えてくれる家族を非常に大切にしていますし、日本に帰ってきたときにはできるだけ家族と一緒にいる時間を増やすようにしているそうです。
野球やサッカーなど大きな報酬を得ることができるスポーツであれば、家族みんなで海外に移住するということもできますが、プロと言っても報酬の少ないハンドボールの世界においては、家族を本国に残して単身いろいろな国を渡り歩いている選手が数多くいます。
おもしろい名言
「サッカーとバスケを足して2で割ったもの」 中学校ハンドボール部キャプテン
部活の説明会において、ある先輩が話した言葉です。
ハンドボールというものがどんなものなのか、中学生にとってはイメージがしにくいと思います。そこで、説明会で冒頭のセリフが飛び出したようです。
確かにゴールを使うところはサッカーに似ていますし、ドリブルをしてシュートするところはバスケットボールにも似ています。
元々、ハンドボールは、冬場、雪に閉ざされ屋外でサッカーをすることができないというところから発展したといわれています。(そのため北欧が盛んで強いチームが多い)
スポーツの表現方法としては間違っていないのですが、なかなか面白い名言です。
「飛んで打て」 監督からの指示
ハンドボールをやっている人であれば「スカイプレイをやれ」という意味であることは知ることができますが、ハンドボールを知らない人にとっては、変わった言葉としか思うことができない言葉です。
いろいろなスポーツがありますが、シュートやショットをジャンプして打つということは、一般的ではありません。
ハンドボールの場合には、自分を優位にするためにジャンプしてシュートします。
ハンドボールをしている人にしか分からない言葉ですし、ハンドボールの一番の魅力を表す名言でもあります。
オフェンス・ディフェンスに関する名言
「1本とって3秒で決めろ」
ハンドボールの顧問やコーチから、よく言われる言葉ではないでしょうか。
3秒ルールではありませんが、ディフェンスが戻る時間を考えると「3秒」という時間は適切な感じがします。
ハンドボールのコートは長い部分でも40m、実際にオフェンスが動く距離で考えると30m程度しかありません。
これだけの長さであれば3秒あればディフェンスは戻ってきてしまいます。そこで、普段から3秒で攻撃をすることを意識するとよいです。
実際に上位チームになると速攻の速度は非常に速く、3秒間でシュート体制まで入ってきます。
攻撃の練習をするときにも、いかに「3秒間でシュートまで持っていくか」、これを意識して練習するとよいと思います。
「ハンズアップ (Hands Up)」
ディフェンスをするときに、合言葉と言ってもよい「Hands Up」。
バスケットボールなどでも使われる言葉ですが、ハンドボールでもよく使う名言です。
手を上げておけばシュートコースを狭めることができますし、相手に対しても威圧感を与えることができます。そして何よりも、次の動きに対する動作が速くなります。
体力的に苦しい時間帯や、ここは1本しっかりと守りたいというときなどに、気合の言葉として使うことをおすすめします。