これからハンドボールのコートを作ろうと思っても、いきなり作ることができるわけではありません。
場所の確保から準備するもの、実際の用意と段取りを組んでいくことが大切です。
準備過程を飛ばしてしまうと、試合中にトラブルになったり、選手のパフォーマンスを最大限に発揮させることができない事態にもなってしまいます。
コートを作るときには、事前の準備からしっかりとしましょう。
コートを作る前に
バスケットボールより大きなコート
ハンドボールコートの大きさは、正式サイズで長辺が40m、短辺が20mです。
これに対してバスケットボールのコートは、正式サイズで長辺が28m、短辺が15m。バスケットボールに比べると、長辺で10m、短辺で5mも広くなります。
バスケットボールのコートは、多くの体育館で白線としてかかれていますが、ハンドボールのラインは引かれていることが少ないです。
しかし、バスケットボールのラインと比べてもハンドボールのコートがかなり大きなものになることを意識することは大切です。
実際にゲームをするときには、コートの大きさに加えて、選手の安全性を確保するうえで大切な安全帯を設ける必要があります。
ハンドボールを体育館で行う場合には、ハンドボールコートの広さを確保することができるのか、安全帯を作る余裕があるのか、ひとつの体育館で複数の試合を同時に行う場合には、安全にゲームを行うにはどの程度の広さが必要になるのか、を考えて会場を確保する必要があります。
コート作りの準備物
ハンドボールコートを作ろうと思っても、いきなりコート作りをすることはできません。準備物が必要になります。
準備物の中には、スポーツ用品店に行けば簡単に手に入るものと、なかなか手に入らないものがあるので、早めに用意しましょう。
ハンドボールゴール
ハンドボールのゲームで欠かせないものです。個人で持っている人はほとんどいないと思いますが、大きく重たいものであるので、会場にあるのかどうかを確認しましょう。
また、搬入ルート、搬出ルートの確保も大切です。
ゴールと併せて用意しなければいけないのがゴールネットで、これも専門のものがあるのかどうかを確認する必要があります。
ゴールとゴールネットは、シュートをする人にとってはっきりと認識できなければいけません。
コートのレイアウトを考えるときにゴールの背景とゴールポスト、クロスバー、ゴールネットの4つが同じような色合いになって識別できない場合は、ゴールの設置位置を変える必要があります。
サイドのチェンジはしますが、一方にとって不利にならない道具を用意しましょう。
メジャー (巻尺)
ハンドボールコートを作るのに、長さの計測は欠かせません。
特に長辺が40mあるので、40m以上測ることができる巻尺が必要です。
ラインテープまたはラインカー
ハンドボールコートをかくときに使います。体育館であればラインテープ、外であれば石灰とラインカーが必要で、色は白を準備します。
ラインテープは、ハンドボール専用というものはなく、バスケットボールなどで使うテープで充分ですが、幅は5cmのものを用意します。
ライン消しテープ
体育館の床面と同じような色の、ライン消しテープが販売されています。
体育館のフロアーにはさまざまなラインが引かれており、このラインの一部を使うのであれば、余分なラインが生まれ選手が混乱します。
特に目標物がなくて分かりにくくなる、サイドラインやアウターゴールラインは、紛らわしい線を消すことができるようにライン消しテープを用意しましょう。
コート作成上の知っておくべきルール
ハンドボールコートを作り始めるために、寸法のはかり方でひとつ注意点があります。
コートのラインを引くときには、基本的に外寸で計算をします。例えばサイドラインの長さは40mですが、この長さは白線の幅を含めて40mになります。
したがって線を引くときには、線の外側にメジャーを当てて、測定後の位置もラインの外側が40mになるように線を引きます。
ゴールラインとフリースローラインも、中心となるゴールから見て、それぞれ6m、9mがラインの外側になるように測定します。
またゴールラインとフリースローラインは半円を描くように線を引く部分がありますが、ここはゴールポストの内側で最もコート側になる角が円の中心になります。
このようにラインを引くときには、外寸で測定することを忘れないようにしましょう。
コート作成の手順
ハンドボールコートを作成する手順は、いろいろとありますが、最も一般的な方法を紹介します。
1. コートの位置を決め、センターラインを引く
はじめに、コートの位置を決め、センターラインを決定します。コートの位置を決めるときにはベンチの位置、安全地帯を考慮して壁や障害物から10m程度離れるようにしましょう。
そして、センターラインを決定します。
体育館では、バスケットボールのセンターラインがあるので、それを活用するのがよいですが、長さが足らないので白線を追加します。
次にサイドラインとなる部分を決定します。サイドラインもバスケットボールコートのサイドラインを使うことができれば、手間を省くことができます。
外寸で測定しなければいけないので、センターラインからは1997.5cmのところがアウターゴールラインの外側になります。
2. アウターゴールラインとゴールの設置
片側のサイドラインが完成したら、次にアウターゴールラインを引きます。
サイドラインと直角に交わるようにラインをひき、サイドラインの外側から反対のサイドラインの外側までが20mとなるようにします。
アウターゴールラインが完成したら、ゴールを設置します。ゴールは内寸が3mであり、ポストの部分の大きさを含めると3m16cmになります。
このため、正確に設置するのであればゴールの場所は、サイドラインの外側から8m42cmのところに片側のゴールポストの外側が来るようになります。
これで、ゴールの中心がサイドラインからちょうど10mのところになります。
ゴール設置時の注意
ハンドボールのゴールは、軽く、動きやすいので、設置するときには動かないように固定することが大切です。
ゴールを設置するときには、ゴールポストのコート側がアウターゴールラインの内側と一致するように置き、ゴール内にはゴールラインを引きますが、ここだけは幅が8cmになります。(ゴールポストと同じ幅)
ゴールの位置が決まったら、ゴールネットを張り、地面としっかり固定します。
ハンドボールでは、サイドシュートがひとつの特徴です。サイドシュートの場合、サイドネットに入ることが多く、サイドネットとポストの部分の結びが甘いと、そこからボールが出てしまうことがあり、判定に困るケースがでます。
ポストとネットの部分は、隙間がないように確実に結びましょう。
3. ハンドボール独特のゴールラインとフリースローライン
コートの外側を書くことができたら、次にゴールラインとフリースローラインを作ります。
ゴールポストからゴールラインに垂直に6mと9mを2か所取り、その両点を直線で結びます。
次にゴールポストの内側、最もコート寄りのコーナーを中心として四分円弧を描くようにラインを作ります。ラインテープを張る場合にはマーキングシールなどを使い、マークしていきます。
同じように反対側も四分円弧をかきアウターゴールラインと交わらせます。その外側に、同じようにしてフリースローライン(半径9m)のラインを引きます。
このフリースローラインは破線になっているので、引くときに注意しましょう。
4. 仕上げの目印をつける
ゴールエリアライン、フリースローライン、そして反対側のサイドラインができたところで、仕上げの目印を付けます。
まず、ゴールから4mのところにゴールキーパーラインを引きます。次にフリースローラインを、ゴールから7mのところに引きます。
最後に選手交代をするためのゾーンとなる交代ラインを、オフィシャル席の前を中心として、センターラインから両サイドに向かって4m50cmのところに引きます。
最後にコートの外になりますが、オフィシャル席の横、センターラインから3.5m離れたところを始点として、コーチングゾーンと交代ベンチを設置します。
これでコートのライン関係は終了になります。
コート周辺の整備
選手が気持ちよく、安心してプレイするにはコートを準備するだけでなく、周辺の環境も整備しておく必要があります。
レベルの高い大会になればなるほど、求められるものが多くなります。
不要な線の削除
選手や審判にとってゲーム中、一番厄介なものがラインです。
体育館では、バスケットボールやバレーボールといったラインがたくさん引かれていることがあり、混同して勘違いをすることになります。
また、同じようなラインがたくさんあると、選手だけでなく審判側にとっても分かりにくいです。
特に同一方向で同一色になっている場合には見分けにくいので、不要なラインを消します。
ラインを消すにはフロアーとほぼ同じ色のマスキングテープが用意されており、これを利用するのが最も効率が良いです。
全部を消すのは非常に大変ですが、プレイに支障があると思われるようなラインは消してしまいましょう。
オフィシャル席の用意
公式なゲームにおいては、オフィシャル席が必要になります。
オフィシャル席は3名分で、1名はタイムキーパー、2名が両チームの得点や反則状況などを記録するスコアラーになります。
タイムキーパーをするには、点数と残り時間を表示することができるデジタルタイマーがあると便利です。ハンドボール専用のものではなく、バスケットボール用のもので代用が可能です。
さらに、オフィシャルが記録するための専用用紙が必要になるので用意しておきましょう。
大会規模によっては、オフィシャル側だけに得点表示があると、周囲の観客から見えづらくなります。
オフィシャルからコートを挟んで反対側にも、得点と時間の分かるものを用意しておくと、周囲の観客は助かります。
予備ボールと防球ネット
広い体育館を利用して2つ以上のコートを設置する場合や、コートの周辺に広いスペースがある場合には、ボールが外に飛んでいかないように防球ネットを設置するとよいです。
特にゴール後ろのスペースは、シュートが頻繁に飛んでいくので、防球ネットがないと遠くまでボールを拾いに行くことになり、ゲームが止まってしまいます。
また、一方のコートだけ壁に近いと、そのチームだけ速攻をかけやすくなるような状況になります。
コートを設置する段階で一方のチームが不利にならないように、コートの周辺も整備しましょう。
ゲーム中のコート管理
大切なフロアー管理
ハンドボールのコートは作ってしまえば、それで終わりというわけにはいきません。ゲーム中も管理が必要になってきますので、その準備も併せて行いましょう。
フロアー管理
体育館などの床で実施する場合には、プレイ中の汗などの水分が床面につくことがあります。
こうした水分は、足元を滑らせ、転倒を招く可能性があるので、濡れているときにすぐ対応できるモップや雑巾などを用意しておきましょう。
ハーフタイムを利用して拭くのもよいです。
ライン管理
体育館で行うときにはあまりありませんが、屋外で行うときにはどうしてもラインが消えてしまいます。
特に、選手の激しい動きにさらされるゴールラインやフリースローラインは、どうしても消えやすくなってしまうので、これもすぐに補修することができるように準備しておくことが大切です。
こちらも、ハーフタイムになったところで修正をしてしまうのがよいやり方です。
まとめ
気持ちよく、安全にハンドボールのゲームを行うためには、コート作成と整備がとても大切になります。
特に長さに関しては、しっかりと測定をしないと、どうしても一方のチームに有利、不利が発生してしまいます。このような状況にならないためにも、コート作成上の注意事項をよく理解して、ラインの作成をしましょう。
また、ただコートを作ればよいのではなく、安全面への配慮も忘れないようにしましょう。コートを作った人は、ゲーム中もコートの管理を怠らないようにしましょう。
ゲームを円滑、安全に進めるためには、しっかりとしたコート作りが大切なのです。