ハンドボールを行うのに、絶対に必要なレフェリー。正しいレフェリングは、正しいゲームの結果を表すだけでなく、ハンドボールという競技への信頼を高めることになります。
レフェリーに関して、日本ハンドボール協会では「レフェリーは競技において常に冷静に、そして鋭い観察力と優れた判断力を持って、確固たる信念を持ち、厳正公平な態度で審判にあたらなければならい」と定められています。
審判の基本ルール
審判の人数
ハンドボールでは、コート上に2名のレフェリー、そしてコートのサイドにタイムキーパーとスコアラーがおり、レフェリーをサポートします。
審判の服装と持ち物
ハンドボールの審判をするのであれば、他のチームの選手との混同を避けるため、上下を黒のレフェリーウェア、ストッキング、シューズ(色は黒)で統一します。
ジャージなどの上着を着用する場合にも、2人のレフェリーで同一であるのが好ましいです。レフェリーウェアについては、日本ハンドボール協会公認のレフェリーウェアがあります。
ゲーム中には、笛(黒色ではっきりと音のするもの)、記録カード、時計、レッドカード、イエローカード、筆記用具を持参します。
公認審判員になっている人は、ワッペン、公認審判手帳、公認審判員登録証を携帯します。
2審制の意味と役割
コートレフェリーとゴールレフェリー
ハンドボールコートには2人の審判がおり、それぞれに役割分担があります。
レフェリーの中でもルールを決めておくことによって役割が明確になり、さらに細かいファウルまでしっかりと取ることができるようになります。
コートレフェリー
コートレフェリーは、バックコートプレイヤーの後方、アウターゴールラインの後ろにいるゴールレフェリーとは対角線のところにポジションを取ります。
コートレフェリーは、基本的にボールの動きを追います。そして、ボールの動きに対する反則を罰します。さらにスローオフや7mスロー、フリースローを実行します。
ゴールレフェリー
ゴールレフェリーは、コートレフェリーの対角線上、アウターゴールライン付近でゴールから3m程度離れた場所にポジションを取ります。
ゴールレフェリーの一番大きな役割は、ゴールエリアラインの監視です。オフェンス側、ディフェンス側の選手がゴールエリアラインを超えていないかどうか観察する必要があります。また、得点が入ったときに得点を認めます。
ただし、この役割は基本的な形であり、ゲームをしている選手のフォーメーションや動き方によってポジションを変えます。
特にマンツーマンやオールコートディフェンスをはるようなケースでは、レフェリーが自分の最も判断しやすい位置を探して、移動する必要があります。
役割は自動的に交代
コートレフェリーとゴールレフェリーは、決められた人がやるのではなく、ゲームの中で役割をチェンジしながら行います。
絶対というルールはありませんが、2人で半面ずつ管理するイメージで、ハンドボールの好守が交代するとレフェリーの役割も交代するイメージです。
審判の仕事ルール
ゲーム開始の前にすべきこと
ハンドボールのレフェリーに対して、試合開始の何時間前までに会場に到着しなければいけないという決まりはありません。
ただし、ゲーム前にはトラブルなくゲームを進めていくためにいくつかの確認事項があります。
競技場の点検
まずは、競技場の点検です。ハンドボールの試合が頻繁に行われているような会場であれば、専門の人がいるのでよいですが、最初の試合やコートを作ったばかりのときには、交代ゾーンやベンチの位置、オフィシャルテーブルの準備物を確認しておく必要があります。
特に、ゴールについては転倒防止の処置や位置、ネットの破損などを確認しましょう。
ボールの確認
2つ目がボールの確認です。試合球として使うボールの空気圧が適正に入っているのか確認します。
空気圧だけでなく、予備としてボールも必要になるので最低2球はボールを準備します。
選手の確認
3つ目に選手の確認です。オーダー通りの選手がベンチをしているのかどうか、すべてのコートプレイヤーが同一のユニフォーム、ゴールキーパーはゴールキーパー専用のユニフォームを着用しているかも確認します。
また、装飾品についても大会の要綱に基づいて利用されているか、確認をします。
ゲームスタートからハーフタイムまで
ゲームが始まる前には、コイントスによってスローオフかサイドの選択を行います。
ゲームが進行し、ハーフタイムになったところで、レフェリーはオフィシャルと前半の確認を行います。
特に重要なのは得点と警告、退場、失格などで、スコアラーに記録されている内容と相違ないことを確認しておきます。
後半とその後
交換をスタートするときには選手が交代していないか、サイドとスローオフは正しいチームで行われているのかを確認します。
ゲーム終了後には、レフェリーのペアと懲罰に関する数を確認し、スコアラーの数とも異なっていないかを確認します。
審判による反則の解説
レフェリーは、反則行為があったときに言葉ではなく、ゼスチャーで反則内容を選手に示さなければいけないルールがあります。
レフェリーをするのであれば、ハンドボールに精通しているだけでなく、反則行為を明確に選手やベンチに対して示す必要があります。
基本的には、反則を確認して笛を吹く、どちらのチームがボールを持つのか指示する、反則の解説をゼスチャーで行う流れになります。
個人のファウルに関するゼスチャー
不正ドリブル(イリーガルドリブル)
前方に腕を伸ばして、ドリブルのまねをするように上下に振る。
オーバーステップ
身体の前で両腕を回転させる。
ゴールエリア侵入(ラインクロス・ライン内防御)
反則のあったゴールエリアに向かって片腕を伸ばし、半円を描くように左右に振る。
ホールディング、プッシング
身体の前で両肘をはって、両拳を突き合わせる。
ハッキング
前方に伸ばした片腕の手首を、もう一方の手でたたく。
チャージング、ブロッキング
肘を曲げて頭上にあげた片腕の手のひらを、もう一方の手の拳でたたく。
チームのファウルに関するゼスチャー
パッシブプレーの予告
手のひらを正面に向けて、前腕が地面に対して垂直に、上腕が水平になるように肘を直角に曲げた片腕を横にあげる。チームベンチに対して分かるような腕側を上げる。
パッシブプレー
前方に伸ばした片腕の手首をもう一方の手のひらで押さえる。
ゲーム進行上で必要なゼスチャー
スローイン
身体の前方に両腕を平行に伸ばし、スローイン方向を示す(身体もボールの方向を向く)
ゴールキーパースロー
片腕を前方に伸ばし、手首を曲げて指先を下に向ける。
3mの距離確保
手のひらを前方に向けて、両腕を曲げ伸ばしする。
得点
片腕を上に伸ばす。
退場宣告(2分間退場)
二本指(人差し指・中指)だけを伸ばし、手を真っ直ぐ上げ、もう一方の手で、対象となる選手を指す。
タイムアウト
頭上で両手を使ってT文字を作る。
ゼスチャーによる指示は、大きな声が飛び交うコート上では必須の印です。この印によって選手だけでなく、ベンチやスコアラー、観客も理解することができます。
すべてに共通しているゼスチャーなので、レフェリーは確実に覚える必要があります。
まとめ
審判の基本的なルールをおさらいしましょう。ポイントは下記の3つです。
体制と服装
ハンドボールのレフェリーは2名体制で行い、基本的には黒系のレフェリー専用ユニフォームを身に付けます。
試合中の役割
レフェリーにはそれぞれの役割があり、ゲーム中には進行状況に合わせて役割を交代します。
ゲーム前には、試合を円滑に進めることができるように事前確認を行っておくようにしましょう。
ゼスチャーを覚える
試合中に反則やゲーム進行を解説するための専用ゼスチャーがあります。レフェリーは、周囲に状況を伝えるため、ゼスチャーを使う必要があります。