ハンドボールの LW(左サイド)とはどんなポジション?
ハンドボールコートの左サイドを駆け上がり、ロングパスを受けて点数を取る速攻を仕掛けるのに欠かすことができないのがLW(左サイド)の選手です。
一瞬にして流れを変えるプレイができるのが、LWの特徴的なスタイルです。
LWのポジション特性とは
最も長い距離を駆け抜ける
LWはRWと対照の位置にあるポジションで、攻撃のときは最もエンドラインに近いところにポジションを取ります。
一方、守るときにもディフェンスの中で最もエンドラインに近いところを守ることになり、長い距離を走らなければいけません。
攻撃に移るときには、真っ先に相手陣内に入っていくスピードが求められます。
ディフェンスから攻撃に切り替わるときに、最初に動き始める
LWの選手は、ディフェンスをするときにゴールラインに近いところに立っています。これはディフェンスラインの最も後方にあり、相手チームの攻撃状況を把握しやすい場所です。
自分のチームが攻撃をされていた場合、ボールが自分たちのボールになった瞬間、または自分たちのボールになりそうと思った瞬間、若干フライング気味に相手陣地に向かってスタートを切ります。
特に、自分とは反対側のサイドからボールが打たれたときには、シュートを打った瞬間に走るように指示されるケースもあります。
ディフェンス範囲は狭め、オフェンスの意識が強い
LWやRWの選手は、他の選手に比べるとゴールラインがあるので、ディフェンス範囲は狭めになります。
サッカーのような、センタリングやサイドチェンジといった攻撃ができないハンドボールでは、ゴールライン際に追いつめるとシュート角度がなくなり、シュートが打ちにくくなります。
そのため、守る範囲は45やセンターの選手に比べると狭くなります。
一方で、オフェンスのときにはLWの選手がどのように動くかで、ディフェンス側は守りにくくなります。
オフェンス時のLWの役割は大きく2つあり、ひとつは自分が攻撃の先頭になって速攻をして点を取りに行くパターン。もうひとつは、LWの選手がサイドに大きく広がることによってディフェンスを広げ、空いたスペースに45やセンターの選手が入ってくる囮になるパターンです。
特に後者の動き方は、45やセンターの選手が点取りやすくするためには不可欠な動きであり、よいLWと悪いLWの分かれ目になります。
LWの適性を持つのは走力・存在感・ジャンプ力に優れた人
ディフェンスを振り切る脚力
LWの選手の利き手はシュートコースの都合上、右利きが圧倒的に優位です。パスも右の選手にしか出しません。
そして、LWに一番求める能力が走力です。ポジションの都合上、最も長い距離を走ることになり、速攻のときには先に出ているLWのところに味方からロングボールが飛んでいきます。
速攻ではゴールキーパーと一対一になる場面が多く、得点の大チャンスです。このチャンスを作り出すためには、ディフェンスを置き去りにしていく脚力が必要になります。
脚力といっても単純に短距離走が速い力ではなく、加速力のよい脚力を持っている選手が理想的です。
ハンドボールでは、コートの端から端でも40mしかなく、ハーフまでなら20mです。速攻を考えれば20mから30mの距離を速く走り、ディフェンスよりも前に出ることができれば、得点のチャンスになります。
短距離ダッシュの速い選手は、LWの適任者と言えます。
強い存在感が相手の脅威になる
LWとRWの選手に共通して求めたい適性に「存在感」があります。
ハンドボールでは攻撃に移るときに、サイドの選手の動きが第一弾攻撃になります。その後、45選手、センターの選手による第二彈攻撃が始まります。
「足が速い」「シュートが上手い」こうした存在感をLWの選手が示すと、相手チームにとっては、LWの選手に対してマークを厳しくしなければいけません。
第一弾の攻撃にディフェンスが集中すると、第二彈攻撃に対する備えが遅くなります。これが、サイドの選手にもうひとつ求められる「囮の動き」です。
試合が始まってすぐの段階で「LWの選手は注意」という存在感を相手チームに植え付けることで、攻撃の幅を広げることができるようになります。
シュートコースを広げるジャンプ力
3つ目にLWの選手に求めたい能力が、ジャンプ力です。元々ハンドボールはジャンプシュートをすることが多いスポーツなので、ジャンプ力があった方が有利です。
しかし、LWの選手がディフェンスの上からジャンプシュートをしてゴールを決めるシーンは少ないです。では、なぜジャンプ力が必要なのでしょうか。その理由はシュートコースを広げるためです。
LWなどのサイド選手は、角度の少ないところからゴールを狙わないといけません。ゴールに向かってシュートをする瞬間に前に向かって跳んでしまうと、シュートコースを広げることができません。
45やセンターの選手はこのようなジャンプシュートをしますが、サイドの選手は少し特殊なジャンプシュートをします。
サイド選手は、シュート角度を広げるために、ジャンプをゴールに向かってではなく、中央(ペナルティーマーカー)の方向に向かって跳びます。
内側に向かって跳ぶことができればできるほど、コースを広げることができるので、決定力を高めることができます。
このときできるだけ中央に身体を寄せるためには、ジャンプ力があるほうが優位になります。
サイド選手に求められる特殊なシュートの打ち方のため、LWの選手はジャンプ力がある方が優位です。
LWの基本的な位置取りと動き
オフェンス時のLWの位置取りについて
LWはオフェンス時に、LBの位置からサイドラインに沿って、ゴールに寄った場所にポジションを取ります。
位置取りのポイントはディフェンスの選手に近寄りすぎないことで、ディフェンスに近寄りすぎるとLBからボールが入ってきたときにディフェンスの選手にカットわれてしまう恐れがあります。
また、できるだけゴールライン近くまでポジションを広げておくとディフェンスの間が空くので、LBやセンターが切り込みやすい隙間を作ることができます。
ディフェンスから離れたライン際に立ち、ボールをもらうときにはそこから少しゴール寄りに入ってボールをもらう、パスをしたらまたライン際に戻るという動き方を繰り返すのがひとつの基本パターンになります。
また、ボールを持ったらすぐにLBに返却をするのではなく、一旦中に切れ込むようなフェイント動作を入れることも大切です。こうすることでLWをマークする選手がゴールライン側に動き、ディフェンスラインの間隔をあけることができます。
フェイントを入れない選手だと、ディフェンスが中央に寄ってしまうので、LBやセンターからの攻撃がしにくくなります。
ディフェンス時のLWの位置取りについて
LWがディフェンスをするときには、LBの選手の左後ろにつき、半円状になっている6mラインに沿って並ぶのが基本です。相手のRWの選手をマンツーマンでマークし、中に入らせないようにしなければいけません。
LWの選手がディフェンス時にやってしまいがちなプレイに、パスカットがあります。攻撃チームのRBからRWに出るパスは、自分の目の前を通るのでパスカットを狙いたくなります。
ただこのプレイには注意が必要で、100%カットすることができる自信のあるときにはカットを狙ってもよいですが、カットに失敗をすると裏を取られて即失点につながります。
同じようなプレイで、LWの選手がディフェンスをするときに前に出てしまうと、攻撃側のRWの選手が背後に入り込み、ノーマークの状態ができてしまいます。
45やセンターのポジションであれば他のポジションの選手がカバーリングできますが、サイドの場合にはカバーをする選手がいないことを意識してディフェンスする必要があります。
速攻をかけるときの動き方
LWの輝く場面が、速攻のときです。LWであれば、RBまたはRWのディフェンス方向からシュートを打たれた瞬間に相手ゴールに向かって走り始めます。
できるだけ早く速攻に移るためには準備が大切で、反対サイドでボールが動いている場合には、9mライン近くまで移動して、いつでも走り出せる準備をしておきます。そしてシュートが打たれたと同時に走り始めます。
キーパーが弾いたり、ディフェンスに当たったりしてこぼれたルーズボールの処理は他の選手に任せます。
走る位置は、はじめサイドラインに沿って走り、センターラインを超えたあたりから曲線を描くようにセンターに寄ってきます。センターに寄るのはシュートコースを広げ、得点の可能性を高めるためです。
速攻のときには、ボールの出し役(主にキーパーや45選手)との連携も大切です。
上手なサイドになると、走りながら戻ってくるディフェンスの位置を確認してハンドサインを送り、外側に走るのか内側に走るのかを意思表示し、マークが少なく得点の可能性が高いところにボールを供給してもらいます。
普段の練習から、ボールの出し役とLWの選手で動き方、サインプレイなどを確認しておくことも大切です。
LWが身に付けたい右足ジャンプシュート
LWの選手が身に付けておくとよい能力はいくつかありますが、代表的なものが「右足ジャンプシュート」です。
右利きの選手は、ジャンプをするときに左足でジャンプし、シュートするのが一般的です。LWの選手も、ジャンプシュートやサイドシュートをするときには左足で踏み切ります。
しかしLWの場合、左サイドからシュートを打ち込むことになるので、できるだけシュートコースの角度を広げなければいけません。このときに役に立つのが「右足ジャンプ」です。
右足でジャンプをすることができれば、足の幅分だけセンターに寄ってシュートを放つことができ、コースの角度を広げることが可能です。また、キーパーのタイミングもずらすことができます。
ただし、左足で跳ぶ場合に比べて右足でのジャンプはバランスを取ることが難しく、練習が必要です。
右でも左でも自由自在にジャンプしてシュートを打つことができるようになれば、サイド以外でもセンターやRWでプレイすることもできます。
1人の選手が複数のポジションを担当することができれば、ポジションチェンジなどゲームの作戦を立てていく上でも重宝します。
LWの参考動画
LWの参考動画をいくつかご紹介します。参考になりますので、ぜひご覧ください。
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