ハンドボールのCB(センター)とはどんなポジション?
ハンドボールのゲームにおいて、ゲームメイクを担うポジションがセンターです。そんなセンタープレイヤーには、どのような技術や適性が求められるのでしょうか。
チームの司令塔として活躍するポジションの役割、フェイントやパスなど求められる能力を解説します。
センターに求められるもの
ハンドボールのセンタープレイヤーに求められる一番の能力は、なんといっても状況判断力です。
さらに、パス能力と広い視野を有していればベストになります。
状況判断を適切にできる人
ハンドボールのコートで中央にいるセンターは、司令塔としての役割があります。そのため、状況判断力が一番大切です。
体格面では大きい必要はなく、小柄でも判断力とパスセンスを持っている人が適任者です。
ハンドボールでは攻撃にうつるとき、最初にサイドの選手が走り、次に45、最後にセンターの選手が相手コートに向かうのが基本形です。
センターポジションの選手は、相手陣地に流れていくボールの行方を見ながら、どのような攻撃をしていくのか考えなければいけません。
そのまま相手ゴールまでボールがたどり着けばよいですが、相手ディフェンスの守りによってボールの動きが止まってしまうようであれば、センターが一度ボールを持ち、攻撃を組み立てる判断をしなければいけません。
また、ゲーム展開の状況を判断してボールを扱うことも大切です。リードしているのか劣勢なのか、残り時間は何分あるのか、チームの疲労感はどんな感じなのか、こうしたことを一番考えなければいけないのがセンターの役割です。
センターからのパスひとつで、攻撃を速くすることもできますし、遅くすることもできます。
こうした状況判断をできる能力、さらにどんな状況下においても冷静でいられる精神力を持っている人が、センターの適任者です。
適切にパスを出す能力
センターの選手に求められるスキルに、パス能力があります。センターはボールが一番集まってくるところであり、状況によってさまざまなパスを出さなければいけません。
フォーメーションプレイでは、センターから始まるプレイが多く、速くボールをさばけばさばくほど、相手のディフェンスラインが対応できなくなるのでスペースが空き、シュート機会を増やすことにつながります。
ハンドボールにある6種類のパス
ハンドボールには大きく6種類のパスがあります。センターの選手はどのパスも使うことが多く、相手をだましてシュートチャンスを増やすためにも使えるパスの多い人が適任者になります。
最も基本的なものがオーバーハンドパスで、オーソドックスに腕を振り、上からパスを出します。遠くまで投げることができる反面、モーションが大きいので相手選手に読まれやすいです。
2つ目がバウンズパスです。相手が上から来ることを読んでいるときに下を通したり、ディフェンスの間を通したりするときにも有効です。
3つ目がハンドボール独特のラテラルパスです。片手でボールを持てるハンドボール特有のパスで、ボールを片手で持ち、体の内側から外側に向かって手首をひねることでボールを飛ばします。
手首の力がないと飛ばしにくいので、こつをつかむまでは、練習が必要です。
長い距離を投げることはできませんが、素早くボールを投げるときにはとても便利で、このパスが両手でできる人がいればセンター向きの選手になります。
他にも手を横から回して投げるサイドハンドパス、ジャンプして投げるジャンピングパス、腕を背中側から回して横に投げるバックパスがあります。
センターの選手は、これらのパスを臨機応変に状況に応じて使い分けることができる能力が必要になります。
広い視野で状況を見極める
センターは攻撃のときに一番最後からチームメイトを追っていくことになるので、攻撃の意識を持っておくと同時に、カウンターを受けたときの守備の意識を持っておく必要もあります。
セットプレイのときにも、センターは味方ゴールに一番近いポジションにいることが多く、相手の攻撃がどのように出てくるのかを把握しなければいけません。
攻撃をする意識よりも、守備的な意識を他のポジションよりも強く持っておくことが大切で、献身的にプレイをすることができる性格の人はセンターに向いています。
攻撃をしているときに相手からカウンターを受けやすいハンドボールでは、その攻撃をいかに潰すことができるかが、勝敗に大きく関わってきます。
センターの基本的な位置取り
コートの中心にポジションを置く
センターの基本的な位置取りは、コートの中心にポジションを取ります。
ゲーム開始時は、真ん中で始まり、センターを中心に左右の45やや前よりのポジション、その45からさらにゴールよりにサイドが位置します。
ちょうど野球で使うホームベースの、一番下の部分にセンターが位置する五角形を作ります。センターはここから細かく左右に動きながら、45の選手をサポートしていきます。
45の選手の前後運動と逆に動くのが大切で、センターと45の両選手が相手ゴールに近づきすぎないようにします。
センターがシュートを狙う時には、45選手は少し後ろに下がるように連動してポジション取りをします。
センターは45を生かす
センターがポジション取りをするときに意識しなければいけないのが、得点力のある人をどう活かしていくかです。
センターの選手が得点を積極的に取りに行くような戦術は、あまり行いません。これは、センターのポジションと相対する部分はディフェンスの中心であり、人数も多いので攻撃を仕掛けるにはリスクが高いためです。
そこでセンターは、チームで最も得点力の高い人が入るポジションである45の選手をどう生かすかがポイントになります。
具体的にはディフェンスの選手を自分に引き付けるような動き、またフェイントを使って自分に人を引き付けさせます。
こうすることによってディフェンスはセンターに寄り、そのぶんだけ、45やサイドポジションの選手のところのディフェンスが薄くなります。ここに瞬時にパスを出すことによって、得点機会を増やすことができます。
能力の高いエースがいれば、よりセンターの役割は大切になり、センターのボールさばきで得点力が大きく変わります。
センターをやる人に身に付けさせたいフェイント能力
センターの選手はパスを出す能力も大切ですが、練習の中で身に付けさせたいのがフェイント能力です。
ハンドボールにはさまざまなフェイントがあります。身体を使って見せるフェイント、ボールの動きでだますフェイント、シュートなのかパスなのか分かりにくくするフェイントなどなどです。
これはハンドボールの練習では基本動作であり、基本動作を忠実に行うことができる選手ほどセンター向きということができます。
ときに切り込んでシュートを打つ、フェイントを入れて他の選手を活かすという、さまざまな攻撃の選択をできるセンターがいるチームは強いです。
センターの応用的な動き方1「ポジション・チェンジ」
センターの選手は、真ん中でプレイをするだけでなく、戦術によって応用的な動きをします。そのひとつがポジション・チェンジです。
これは相手チームとディフェンスの体格差に、ミスマッチが起こったときに使うことが多い動き方です。
センターの選手は、動きの俊敏性や判断力を求められるので、体格よりも能力重視で選ばれることが多いです。
一方で45の選手は体格が大きく、シュート力の高い選手が集まります。
このままだと、自分のチームの45選手は相手の大きな選手と相対することが多くなり、シュートが打ちにくくなります。
そこで、攻撃の瞬間に45の選手とセンターがクロスする動きをして、45選手が真ん中からシュートを打つことができるようにします。こうすることでシュートが打ちやすくなり、さらにシュートコースを広げることができます。
ディフェンスもこのような動きをしてくるとマンツーマンディフェンスがしにくく、ゾーンディフェンスをせざる負えなくなるので、マークが難しくなり、選手間のスペースが空いてしまうことも多いです。
センターの応用的な動き方2「ダブル・ポスト」
守備力を犠牲にして、攻撃に重きを置く戦術にダブル・ポストという攻撃方法があります。
このときは通常1人のポストプレイヤーを2人にしますが、この2人目にセンターの選手が入ることが多いです。
ダブル・ポストになると相手ゴールに近いところに2人の選手を配置できるので、こぼれ球を拾いやすくなったり、2人のポストでスクリーンプレイをすることでフリーのスペースを作り出し、45選手がシュートをしたりすることができます。
このような状況になるのは少ないと思うかもしれませんが、ハンドボールには「2分間退場」というルールがあります。悪質なファールをしたときに宣告されるものですが、ハンドボールではかなりの頻度で退場が宣告されます。
こうした数的優位な状況になったときにダブル・ポストを使うことが多いので、センターはポストポジションも練習しておくとよいです。
センターの応用的な動き3「退場対応」
ハンドボールでは悪質なファールがあると「2分間の退場」になります。2分間を耐えることができれば元の人数に戻りますが、一時的にチームのメンバーやポジションが足らない状況ができあがります。
こうしたときにセンターは攻撃時、退場して抜けてしまったポジションに入ることが多くあります。ある程度、どのポジションでも対応できる動きは知っておくとよいです。
強いチームほどセンターは固定
司令塔であるセンターはチームの戦術上、たくさんの役割があります。まさにコート上の監督といっても過言ではありません。
そのため、できるだけセンターの選手は固定できることが望ましいです。
強いチームにはしっかりとした司令塔がおり、その選手を中心として戦術が組み立てられています。センターが安定しないと連動して動く45との連携が悪くなり、得点力が落ちます。
指導者は、チーム作りをしていく段階からだれがセンターとして適性を持っているのかを見極めて、チーム作りをしなければいけません。
そして、できるだけ固定して戦術を教えていくことでチームの力を高めることができ、結果的にはチームを強くすることができます。
センターの参考動画
センターの参考動画をいくつかご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
※8:13あたりからがおすすめ。